相続が発生し、多額の相続税に愕然としている人も多いのではないでしょうか。
遺産で相続税を納税できれば良いのですが、なかなかそうはいかないのが現実です。
この記事では、相続税が払えなくて困っている人のために、「相続発生後にできる対処法」について紹介していきますので参考にしてください。
相続税が払えない時にできる5つの対処法
相続税は、現金を多く持っている富裕層だけに課税されるものではありません。
現金がない場合であっても、家を持っていれば誰しも相続税が課税される可能性があります。
実際に相続税が払えない状況に陥ってしまった人のほとんどは、不動産はあるけど現金はないというケースだと思います。
「納税する現金はないのに、相続税評価の対象である不動産が原因で相続税が高い」というケースは本当によくあります。
不動産が原因で相続税が払えない人ができる対処法は、以下の通りです。
- 小規模宅地等の特例が利用できないか確認する
- 売却して納税資金を確保する
- 銀行などの金融機関から融資を受ける
- 宅地分割する
- 物納する
一つずつ詳しく解説していきます。
小規模宅地等の特例が利用できないか確認する
相続税額は、「小規模宅地等の特例」が適用できるかどうかで大きく変わってきます。
小規模宅地等の特例とは、被相続人の持ち家の評価を80%割引してもらえる制度で、非常に高い節税効果があります。
不動産の評価に対して8割控除なので、相続税評価額の高い不動産であればあるほど、特例による控除額も大きくなります。
不動産の相続税評価額 | 特例適用後の評価額 | 控除額 |
---|---|---|
3,000万円 | 600万円 | 2,400万円 |
1億円 | 2,000万円 | 8,000万円 |
生前に同居していないと適用されないと勘違いしている人も多いのですが、ほとんどの宅地に適用できるので、適用を受けられないかしっかりと確認してください。
小規模宅地等の特例の適用を受けることで相続税評価額が減れば、基礎控除額内に収まり、相続税を払わなくていいかもしれないのですから、確認する価値は十分にあります。
参考 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)国税庁売却して納税資金を確保する
相続した不動産を売却して、納税資金を確保するという方法もあります。
ただし遺産分割協議で相続人全員の許可を得なければ、売却することはできないので注意してください。
譲渡所得税を懸念する人もいるかもしれませんが、相続発生から3年10ヶ月以内に売却すれば、「相続税が取得費に加算される特例」の適用を受けることができ、所得税を免除してもらうことができます。
参考 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例国税庁また、自分の不動産の評価額を把握しておくことは大切ですが、悪質な不動産業者による査定額に騙されないように注意しましょう。
相続不動産を安く売却してしまえば、他の相続人から非難されトラブルに発展する可能性があります。
銀行などの金融機関から融資を受ける
不動産を手放したくない人は、銀行などの金融機関から相続税の納税資金を調達するのも一つの手段です。
相続不動産が売却できるまでのつなぎとして、融資を受ける人もいます。
すぐに売却できるとは限りませんし、急いで売りに出してしまうと売却価格がどうしても安くなる傾向にあるからです。
借り入れになるため返済していく必要はありますが、相続税が払えずペナルティが課せられたり差し押さえになったりする不安から解消されます。
相続登記が済んでいれば、不動産を担保に融資を受けることも可能です。
宅地分割する
土地を2つ以上に分割すると、土地の評価額が下がることがあります。
なぜなら土地の評価額は路線価方式で決まるのですが、路線価は宅地が接する路線の数が多いほど評価額が高くなるからです。
分割手続きには30万円前後かかってしまいますが、何百万、何千万円と相続税を減らせる見込みのある方法になります。
物納する
物納は、延納でも相続税を払えない時に、現金ではなく不動産などの特定の相続財産で納付する方法です。
相続した不動産を売却しようと思っても、相続税評価額より低い価格でしか売却できない場合も少なくありません。
物納なら、相続税評価額で収納してもらえるため、売却するよりもメリットが大きい可能性があります。
ただし物納するためには、以下の条件をクリアしなければなりません。
- 延納でも払えない理由がある
- 金銭で納付することが困難である金額である
- 相続税の申告期限までに物納申請書を提出する
「相続税が払えないから不動産を相続放棄」は認められる?
「相続税が払えないから不動産を相続放棄したい」という希望は、認められるのでしょうか。
結論から言いますと、相続税が払えないという理由でも、相続放棄することは可能です。
ただし相続放棄すると、他の財産を相続する権利も同時に失います。
預貯金や株などは受け取り、不動産は受け取らない、というのは通用しないということです。
「他の財産は相続したい」という場合は、相続放棄ではなく、物納や売却など上記の方法でどうにかならないか模索してみてください。
相続税が払えないとどうなる?
相続税が申告期限までに払えないと、延滞税や加算税が課税される場合があります。
相続税の支払いだけでも大きな負担であるにもかかわらず、さらにペナルティが課せられれば堪らないのではないでしょうか。
「高額な相続税を払いたくない」「申告しなければ分からないのでは」と思われる人もいるかもしれませんが、税務署には被相続人の財産についての情報が筒抜けです。
払うのを渋っていても、問題が深刻化していくだけですので、なるべく早く納税して解決させたほうが良いと思います。
まずは上述で紹介した4つの金策でどうにかならないか確認し、どうしても納税資金を捻出することが難しければ、税務署に正直に相談してみてください。
現金ではなく不動産などで相続税を支払う物納や、何年かに分けて納税する延納など、他の納税方法を案内をしてもらえるかもしれません。
相続税納税のために借金をする人もいますが、延納を認めてもらうことができれば、わざわざリスクのある借金をする必要はありません。
銀行へ相談にいく前に、税務署に相談するのがベターです。