不動産を相続した際には、「どんな手続きが必要なんだろう?」「相続税はどれくらいかかるんだろう?」など、不安に感じる人がほとんどだと思います。
相続について知っておかないと、相続争いに発展したり、税金を払いすぎてしまうリスクがありますので注意してください。
この記事では、「不動産を相続したに必要な手続き」から「相続登記(名義変更)のやり方」「不動産を相続したときにかかる税金」について紹介していきます。
不動産を相続したときに必要な手続き
不動産を相続したときに必要な手続きは、以下の通りです。
- 手順1すべての遺産を把握する
- 手順2遺産分割協議をおこなう
- 手順3相続登記(名義変更)をおこなう
すべての遺産を把握する
被相続人が住んでいた不動産をどうするか、というのは大きな問題ですが、まずはすべての遺産を把握する必要があります。
相続税がかかる遺産については、国税庁の以下の記載を参考にしてください。
(2) 被相続人から生前に贈与を受けて、贈与税の納税猶予の特例を受けていた農地、非上場会社の株式や事業用資産など
(3) 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税又は結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税の適用を受けた場合の管理残額
(4) 相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に被相続人から財産の贈与を受けている場合(一定の特例を受けた場合を除きます。)
(5) 被相続人から、生前、相続時精算課税の適用を受け取得した贈与財産
(6) 相続人がいなかった場合に、民法の定めによって相続財産法人から与えられた財産
(7) 特別寄与者が支払を受けるべき特別寄与料の額で確定したもの
現金や預貯金はもちろん、有価証券や宝石、土地などの不動産など、お金に換算できるものはすべて明確にしておきましょう。
また借金などのマイナスの財産も、相続財産になりますので注意してください。
遺産分割協議をおこなう
被相続人の財産がすべて把握できたら、法定相続人で遺産分割協議をおこないます。
法定相続人になれるのは、被相続人の配偶者、被相続人の子、被相続人の父母、被相続人の兄弟姉妹に限定されており、さらに優先順位が決められています。
常に相続人 | 被相続人の配偶者 |
---|---|
第1順位 | 被相続人の子 |
第2順位 | 被相続人の父母 |
第3順位 | 被相続人の兄弟姉妹 |
配偶者は常に相続人で、配偶者以外は優先順位の高い人のみが相続人になります。
遺産総額を把握するのと同時に、誰が相続人になるのか明らかにしておきましょう。
また遺言書がある場合、遺言書に書かれている内容に沿って遺産を分けることになるため、遺言書がないかどうか探す必要があります。
遺言書を見つけたら封をあけずに家庭裁判所に提出し、検認してもらってください。
遺言書がなければ、法定相続分に従って分割するのが一般的です。
相続登記(名義変更)をおこなう
遺産分割協議をおこない、不動産を相続人の誰が受け取るか決まったら、相続登記をおこないます。
遺言書に不動産を相続する人が指定されていた場合は、それに従い相続登記をおこなってください。
相続登記をしなくても住むことはできますが、名義を被相続人のままにしておくと、他の相続人が勝手に売却できてしまったりと様々な不都合があります。
速やかに手続きをおこなうのが賢明でしょう。
もしも相続した不動産を売却する予定がある場合は、所有者の名義変更が終わっていないと売ることができないので注意してください。
不動産を相続したときの相続登記(名義変更)は、司法書士に依頼して手続きを進めてもらうのが一般的です。
自分で相続登記(名義変更)をおこなう手順
自分で相続登記する場合は、以下の手続きが必要になります。
- 手順1物件および相続人の調査
- 手順2固定資産評価証明書などの必要書類を集める
- 手順3相続登記申請書類を作成する
- 手順4遺産分割協議で相続人全員の署名押印を集める
- 手順5法務局に申請書類等を提出する
相続登記したときにかかる税金
不動産の相続登記には、登録免許税という税金がかかります。
登録免許税とは、不動産の名義変更をおこなうときに必ずかかる税金で、税額は以下の通りです。
たとえば固定資産税評価額4,000万円のマンションを売却するときにかかる登録免許税は、「4.000万円×0.4%=16万円」になります。
マンションの売却価格ごとの登録免許税を表にまとめましたので、参考にしてください。
1,000万円 | 4万円 |
---|---|
2,000万円 | 8万円 |
3,000万円 | 12万円 |
4,000万円 | 16万円 |
5,000万円 | 20万円 |
6,000万円 | 24万円 |
また司法書士に支払う手数料として、登録免許税とは別に5〜10万円の手数料がかかりますので、合わせて準備しておきましょう。
参考 No.7191 登録免許税の税額表国税庁名義変更における必要書類一覧
不動産の名義変更には、以下の書類が必要になります。
- 所有権移転登記申請書
- 新所有者の住民票
- 固定資産評価証明書
- 相続関係説明図
- 相続人全員の印鑑証明書付き遺産分割協議書
- 被相続人の出生から死亡まで記された戸籍(除籍)謄本
- 被相続人と相続人との関係を明らかにする戸籍謄本
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
「相続人全員の印鑑証明書付き遺産分割協議書」と「被相続人の出生から死亡まで記された戸籍(除籍)謄本」「被相続人と相続人との関係を明らかにする戸籍謄本」の3つは、相続手続き3点セットと言われています。
預貯金や自動車など、不動産以外の名義変更時にも必ず必要になる書類のため、他の手続きに必要な分も合わせて取得しておくと良いでしょう。
不動産を相続したときにかかる税金
相続に関する知識がないことから、税金を払いすぎているケースも多く見受けられます。
払いすぎを防ぐために、しっかりと知識を身につけましょう。
不動産を相続したときにかかる税金は、以下の通りです。
- 相続税
- 譲渡所得税(売却時)
相続税を10ヶ月以内に支払う
相続が発生してから10ヶ月以内に、相続税を支払わなければなりません。
「相続税はいくら払うの?」と、不安に感じる人がほとんどではないでしょうか。
相続税を計算するためには、まず不動産を含めた遺産総額から基礎控除額を差し引き、差し引いた金額を遺産分割協議で取り決めた割合でそれぞれ按分します。
そして、按分した額に応じて税率を乗じて算出します。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、相続税に課税される税率と控除額は以下の通りです。
決定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | – |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
引用:https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/4155.htm
平成27年に基礎控除額と税率に大幅な変更があり、今までなら相続税が課税されなかった人も、課税される場合がありますので注意してください。
不動産を相続した時の税金はいくら?相続税の計算方法をわかりやすく解説相続税評価額の計算方法について
相続した不動産の価値が分からなければ、相続税の計算もできません。
相続税評価額は、土地と建物部分を分けて計算します。
それぞれの計算式は、以下の通りです。
土地の評価額 | 路線価×面積 |
---|---|
建物の評価額 | 固定資産税評価額と同額 |
路線価については国税庁のホームページで、土地の面積と固定資産税評価額については固定資産税納税通知書を確認してください。
土地・建物の相続税評価額の計算方法をわかりやすく解説「路線価方式・倍率方式」売却したときにかかる譲渡所得税
相続した不動産を売却して相続税の支払いに充てる、という人も少なくありません。
しかし相続した不動産を売却する場合、譲渡所得税がかかるということも知っておく必要があります。
譲渡所得税の計算式は、以下の通りです。
取得費は不動産を購入したときの金額のことで、相続した不動産の場合、取得費が分からないケースも少なくありません。
取得費が分からないときには、概算法を用いて「売却代金×5%」を参入するのですが、そうなると譲渡所得税が非常に高額になってしまいます。
相続した不動産を売却する場合には、あらかじめ譲渡所得税がいくらかかるのか計算しておきましょう。
相続した不動産の売却でかかる税金と節税対策について徹底解説!確定申告をおこなう必要がある
相続した不動産を売却して利益を得た場合、確定申告をおこなう必要があります。
確定申告は、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日の間におこないます。
特別控除を利用して利益がなかったことになった場合に、確定申告をおこなわなくて良いと勘違いする人もいますが、特別控除を利用するためにも確定申告はおこなわなければなりません。
サラリーマンなど、普段は確定申告をおこなう必要がない人は、確定申告のやり方が分からないと思います。
国税庁のホームページにやり方について解説がありますので、そちらを参考に申告をおこなうか、最寄りの税務署にいって教えてもらうと良いでしょう。
不動産を相続したときの疑問
不動産を相続放棄することはできる?
不動産の相続を放棄することは可能です。
ただし不動産を相続放棄するのであれば、預貯金など他の遺産の相続も合わせて放棄しなければなりませんので注意してください。
相続放棄する場合は、相続が発生してから3ヶ月以内に手続きをおこなう必要があり、手続きをおこなわなかった場合には自動的に相続することになります。
遺言書を開封するとどうなる?
家庭裁判所の検認をおこなわずに勝手に開封した場合、5万円以下の罰金を支払わなければなりません。
これは遺言書を自由に開けられられないためのルールで、改ざんなどのリスクをなくすためのものです。
もしも遺言書の内容を改ざんした場合は、相続する権利がなくなりますので、絶対におこなわないようにしましょう。
遺言書を見つけて中身が気になる気持ちも分かりますが、封を開けずに家庭裁判所に提出してください。